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新型コロナウイルス抗体検査始めました。
- 2020/06/26
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当院でも新型コロナウイルスの抗体検査ができるようになりました。抗体検査については、あまりよくわかっていないことも多く、診断価値が必ずしも高くないです。検査を希望される場合は、必ず下記の説明文をお読みください。
・当院ではIgGのみの検査です。
・抗体陽性でも今後かからない保証にはなりません。
・現在の感染を疑った場合はPCR検査の方が良いため、風邪症状、あるいは発熱(解熱後1週間未満)のある方はお断りしています。
・健康保険は適応されませんので、自費8000円かかります。
・外部委託のため、早くても2-4日程度のお時間がかかります。
・PCRや抗原検査を行っておりません。
・集団検査については、出張も含めできる範囲で対応しますので、ご相談ください。
まずは一般的なお話をします。
抗体とは、異物や病原体(今回は新型コロナウイルス)などに対し、免疫反応によって産生された物質です。免疫グロブリン(Immunoglobulin:Ig)と呼ばれ、そのうちのIgM、IgGを測定することで、現在の感染状況がある程度予測できます。IgMは感染初期に産生され、短期間で消失します。IgGはIgMに遅れて産生され、長期にわたって持続します。
例えば、
IgM陰性 IgG陰性 : 未感染、あるいは感染超初期(まだ抗体が上がってきていない)
IgM陽性 IgG陰性 : 感染初期(現在かかっている可能性がある)
IgM陽性 IgG陽性 : 感染中期から後期(免疫ができてきている)
IgM陰性 IgG陽性 : 感染後期あるいは過去の感染
以上が一般的ですが、新型コロナウイルス感染症についてはIgMが陽性でも、感染初期といえるかわからないなど、まだよくわかっていないことが多く、上記の通りには判定できないかもしれません。
様々な抗体検査が発売されており、その中には外来で指先に針を刺して少量の血液を搾り取り、20-30分程度待つだけで結果がでる迅速検査も何種類か販売されています。どれもばらつきがあり、その信頼性には疑問が残ります。当院では現時点で迅速検査キットは採用せず、厚生労働省が抗体保有率を把握の調査のために採用したアボット社の検査試薬を採用しました。こちらはしっかりと採血しなければなりませんのでご了承ください。
アボット社の抗体検査はIgGのみとなります。抗体の有無を見るだけならIgGだけで十分です。2020年7月1日より、より感度、特異度の高いロシュ製のIgM+IgGも採用されました。これは個別に測定するのではなく、両方合わせて測定します。新型コロナウイルス抗体に関してはほぼ同時に検出されるとの報告もあり、過去の抗体の有無を見る意味ではIgMが含まれていても問題ありません。
アボット社製 | ロシュ社製 | |
感度 |
3-7日 25% | 0-6日 65.5% |
8-13日 86.4% | 7-13日 88.1% | |
14日以上 100.% | 14日以上 100.0% | |
特異度 | 99.6% | 99.8% |
上記表を見る限りにおいては、ロシュ製の方がより高感度かと思います。選択は可能ですが、ご希望がない場合はロシュ製の検査を行います。
最後に、IgG抗体を持っているからといって今後かからない、かかりにくい、かかっても軽く済むなどについてもよくわかっておりません。その上で抗体検査を希望される方はご相談ください。